ダウンシフトを生きる

「ダウンシフト」、一緒にはじめませんか?

金子美登さんの話を聞きに行く

こんにちは。OGUROBBYです。

季節が進み、近所の道の駅で売っている野菜も、種類が変わってきました。
これまで里芋、サツマイモといった芋類が多かったのですが、この間、ホウレンソウを買いました。
まだ季節が若干早いのか、間引いたものかもしれません。
かなり小ぶりなもの。

しっかり根が付いていたので、食べた後、根だけ庭先に植えてみました。
生えてくるのか、今から楽しみです。

目次
1.下里農場 金子さんとは?
2.切り花国家 日本

 

1.下里農場 金子さんとは?

まずは、金子美登さんについて。
一言で言うと、現在の日本の有機農業の第一人者。

1948年生まれ。
埼玉県小川町にて、約3haの農地で有機農業を営む。
有機農業の先駆者として、集落全体を有機栽培へと引っ張りました。
2015年秋に黄綬褒章を受章。
NHKのプロフェッショナルにも取り上げられたことがあるようです。

今回、お隣 益田市に講演会(無料!)ということで、話を聞きに行ってまいりました。


実は、金子さんの話を聞くのは2度目。
ちょうど1年前位に、埼玉県小川町の霜里農場(金子さんの農場)見学会を夫婦で訪れたことがあります。

そこでの運命的な出会い。
僕たち夫婦が島根県吉賀町に移住するきっかけを頂いた。
そんな出会いがありました。
金子さんではないんですけどね。(笑)


金子さんの話の中身は、後ほど。

そんな金子さんが、近く(益田市)に来るというので、勝手に浅からぬ縁を感じて、話を聞きに行ってきました。

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2.切り花国家 日本

金子さんのお話は、素晴らしいものでした。
金子さんの有機農家としての凄さは、恐らく僕程度が語れるものではありません。
その思考、実践、経験は、プロの農家ほど凄みを感じるのだと思う。

僕が面白いと思ったのは、その経験に裏打ちされた、金子さんの国家観みたいなものが垣間見えたから。

曰く、「切り花国家 日本」。

金子さんの造語です。

目に見える部分(工業都市)は体裁を整えているけれど、食料の自給率OECD加盟国34か国中、29位。
(日本の自給率は、カロリーベースで言うと僅か39%。)

植物は、光合成も行いますが、養分の多くを根っこから吸収しています。
国にとっての根っこは、農業であり、農村である、というのが金子さんの持論。
世界的には今後益々人口が増え、食糧難になっていくのが確実と言われる中、これでよいのでしょうか?

「農政も国政も、草一本抜いたことが無い人がやっている。
だから、規模を大きくすれば競争力(=生産性、利潤性)が上がると思っている。」


これは、その通り。
残念ながら、日本の農産物は、工業製品のように扱われてしまっているのが事実です。
あたかも、それが「食べ物」であることを忘れてしまったかのように。

決まった資源(土地、人手、時間)で如何に収穫量を上げるか。
そして歩留まり("良品″率)も上げなくてはならない。
だから、化学肥料も、農薬も、除草剤も使う。
それで、自給率39%…。


ネオニコチノイド系の農薬の話もありました。
ミツバチの帰巣本能を狂わせる、と言われているアレです。
これは浸透性の農薬で、表面だけでなく植物、生物の内部まで入り込んでしまいます。
人間の神経の伝達にも影響を与える可能性が取沙汰されています。

EUでは禁止されているこの農薬が、日本では「安全」のレッテルを貼られ、400種類以上も登録されているというのです。


本筋からは逸れますが、この日印象に残った言葉。
この日、金子さんと一緒に登壇した方の言葉です。
「農薬で被曝し、肝硬変になった」と言う自身のエピソードを交え、「自然(=身体)は嘘をつかない」と話していました。


この話聞きながら、何故か昔聞いた言葉が甦ってきました。
僕が社会人1年生だった頃の話。

「数字は嘘をつかない」

職場の先輩に良く御指導頂いていました。
報告書が抽象的過ぎて、客観性に欠ける、と。

あれから20年弱。
人並みに働き、サラリーマンを辞めて島根に移住した。
今でも、その言葉自体は正しいと思う。
でも、ちょっと付け足したい。

「数字は嘘をつかない。でも、数字を扱う人間は嘘をつく(ことがある)。」

数字自体は意思を持っていません。
だから嘘をつかない。と言うより、つけない。
でも、人間が数字を扱う場合、そこには扱う人の意思が存在する。

別に、「捏造」ということを言いたいのではありません。

例えば、あるクルマの販売を伸ばすために、「お陰様で売上げNO.1」というキャッチコピーを作ったとする。
この場合、伝えたい結論として、「売上げNO.1」というのがある。
後は、どこの数字をどう切り取ってくるかなんです。
過去1年なのか、今年度なのか。はたまた直近3カ月、なのか。

どの数字を切り取るかによって、結論なんていくらでも後付けできてしまいます。
先の例なんて、まだ小さい話です。

原発TPP遺伝子組み換え
利権絡みで結論ありきの話なんて、世の中には沢山ある。


話が逸れました。
切り花国家に話を戻します。

明治維新以降、日本の近代化は工業を中心に進められてきました。
現代の工業は、大量生産、大量消費を前提にしたものです。
そこでは効率が最優先。
僕自身、工業製品の恩恵は受けているので、それら全てを否定はできないし、するつもりもない。
でも全ての物差しを、工業製品に合わせる必要はない。


金子さんが、最後にこんな話をされていた。

モノには大別すると3つの種類がある。
 1) なくてはならないもの
 2) あってもなくてもよいもの
 3) あると害になるもの

「なくてはならないもの」。これは間違いなく食料。しかも安全なもの。
「あってもなくてもよいもの」。これは工業製品。
「あると害になるもの」。これには原発を挙げていた。


「なくてはならないもの」
僕たちは自分の頭に問いかけるのではなく、身体に問いかける必要があるのだろう。
自然は嘘をつかないのだから。